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使用用語の解説

*一部「新しい結核用語事典」より抜粋しています

疫学指標(結核の~)

結核まん延の程度をみるための指標を総称していう。サーベイランスによって得られる結核死亡率や罹患率(特に塗抹陽性の罹患率)、実態調査によって得られる有病率が用いられる。結核死亡率や罹患率はサーベイランスの精度に影響されるため、比較は結核対策のカバー率の似ている地域間や、同一地域の継続的な観察に適している。有病率は精度の影響のない科学的な指標であるが、実態調査には費用がかかる。東南アジア地域ではおこなわれているところもあるが、わが国では1973年を最後にその後行われていない。

概数

統計を確定する前に仮の値として公表された数字です。(例)死亡数はまず概数が公表され、その後確定数が公表されます。

喀痰塗抹陽性肺結核患者罹患率

肺結核患者のうち、患者の喀痰による塗抹検査により抗酸菌が確認された患者数を人口10万人あたりの率で表したもの。

確定数

公開される統計で、概数に修正を加えたものでこれ以降に数が変わることはないものです。(例:総務省統計局のホームページより)毎月1日現在の推計人口は、当月の下旬にまず概算値として公表し、確定値はその5か月後に公表しています。なお、10月1日現在の推計人口の詳細な結果は、翌年の4月に公表しています。

学会分類(日本結核病学会病型分類)

結核患者の管理と疫学的解析に必要な最小限度の事項(病変の重症度、医療の要否、感染の危険性)を知ることを目的としている。本分類は空洞の有無と病巣の安定・不安定を骨子としており、病側(l,r,b)、X線所見(Ⅰ~Ⅴ型)および病巣の拡がり(1~3)の順に記載する。わが国で発生届、入退院届、医療費公費負担申請などに広く用いられている。

活動性結核

臨床所見、X線所見、細菌学的所見などから総合的に検討して治療が必要と認められるものをいう。治療を終了したものは、不活動性に分類を変更する。

活動性分類

本来は保健所における結核登録者の管理のために策定された管理区分で、現時点の登録者の病状と必要な指示の組み合わせで決められる。現在用いられる区分は
①結核の治療が必要な者=「活動性」、②経過観察が必要なもの=「不活動性」、③病状に関する情報のない者=「活動性不明」、である。さらに登録時(今回の治療開始時期)の病状に関してはより詳細に①肺結核・喀痰結核菌塗抹陽性初回治療、②同再治療、③肺結核その他菌陽性、④肺結核菌陰性、⑤肺外結核、⑧潜在性結核感染、に分ける(「総合患者分類コード」と呼ぶ)。これは患者の固定的な区分であり、登録経過中に変化するものではないが、新たな活動性分類として記載されることがある。

仮登録者

結核登録者情報システムで用いている登録者の区分です。登録に必要な情報がなくても登録が可能です。ただし、正式な登録ではないため、月報や年報のような統計には反映されません。

患者分類コード(総合患者分類コード)

結核の活動性分類を、結核登録者情報システムで用いる登録者分類コードに置き換えたものです。結核登録者情報システムに入力された登録者の情報(治療歴、病類、菌情報等)を基に自動的に分類コード化されます。「結核の統計」は、総合患者分類コードを基に集計されます。登録時の総合患者分類コードは、 1~5,8 の6種類ですが、それ以降、登録途中の総合患者分類コードは1~9 の9種類を使用します。
1. 肺結核活動性喀痰塗抹陽性初回治療
2. 肺結核活動性喀痰塗抹陽性再治療
3. 肺結核活動性その他の結核菌陽性
4. 肺結核活動性菌陰性・その他
5. 肺外結核活動性
6. 不活動性
7. 活動性不明
8. 潜在性結核感染症(治療中)
9. 潜在性結核感染症(観察中)

既感染者

結核感染を受けたことのあるもの、潜在性結核感染のあるものということもでき、将来にわたり結核発病のリスクを負った状態と考えられる。これまでは胸部X線所見のある場合を除いてはツベルクリン反応検査が唯一の診断方法であったが、最近クォンティフェロンなどのインターフェロンγ放出アッセー(IGRA)によってより特異的に診断できるようになった。

基準化偏差

値の大きさも違えば単位も異なる幾つかの結核指標値を比較できるようにしたものです。例えば、罹患率は人口10万対率ですが、肺結核中菌陽性率は割合(%)です。また平均的な大きさも罹患率が20前後なのに対し、肺結核中菌陽性率は80(%)前後です。よってA県の罹患率が25で肺結核中菌陽性率 80(%)であったとしても差は同じというわけにはいきません。基準化偏差は、平均を0、ばらつきを示す標準偏差を1とする分布のうえに、A県の罹患率や肺結核中菌陽性率の位置付け(基準化)をします。その結果、罹患率の基準化偏差が1.2、肺結核菌陽性率の基準化偏差が0.8となった場合には、罹患率の方が平均より高い方へ離れている、といえます。

菌陽性肺結核患者罹患率

肺結核患者のうち、塗抹検査、培養検査、核酸増幅法検査等により菌陽性が確認された患者数を人口10万人あたりの率で表したもの。

結核指標値

結核の蔓延の大きさや結核疫学状況を観察し、対策の評価等をするために考案された統計値の総称です。例えば、結核の蔓延の大きさをみるために使われる結核罹患率などの事です。

結核管理図

わが国の結核の現状を把握するため、結核登録者情報調査より得られたデータをもとに結核指標値を算出し、その指標値の大きさを平均からの比較(基準化偏差)で図示したものです。その目的は、全国ならびに地方自治体及び保健所の結核問題やその特徴を結核管理図の形で示し資料として提供することにあります。

結核サーベイランスシステム

サーベイランスシステムは流行を監視するシステムです。サーベイランスには、①常時(定期的)情報を収集し、②定期的に集計・解析し、③定期的に解析結果を還元するという意味がありますが、結核の場合は、それに④還元された結果を次のアクション(対策)に繋げる、が含まれています。公的なシステムとしては、感染症法のもとに運用されている「結核登録者情報システム」を指します。

結核死亡率

当該年に結核で死亡した数を人口10万対で表します。分子は人口動態統計年報より死因簡単分類の「結核」の数を用い、分母は当該年の10月1日現在の日本人人口を用います。

結核登録者情報システム

日本国内で発生した結核患者の保健所における登録・管理および自治体・国への報告を目的とした、感染症サーベイランスシステム(NESID:National Epidemiological Surveillance of Infectious Diseases)のサブシステムのひとつ。患者の登録時(診断時)の状況、治療中の情報、治療結果、治療後の管理状況等の情報を収集している。「結核の統計」をはじめとする各種の結核統計は、この結核登録者情報システムのデータを元としている。

月報(結核登録者情報調査月報)

結核登録者情報システムの情報を元に、月単位で集計される報告書です。

コホート分析法(コホート法)

コホートとは、一年間あるいは四半期など時期を定めてこの間に治療を開始した患者の集団を指します。このコホート集団を一定期間追跡し、治療終了時点での成績を見るのがコホート分析法です。世界的に治療サービスの評価に広く用いられており、WHOでは①治癒、②治療完了、③死亡、④失敗、⑤脱落、⑥転出、 ⑦評価できず、に分類しています。①+②を「治療成功」とよびWHOは85%達成を目標にしています。2007年からの結核登録者情報システムでは、前年登録の肺結核患者を対象に、入力された情報から自動判定し、15のコードに分類しています。「結核の統計」では15区分をまとめ、①治癒、②治療完了、③ 死亡、④失敗、⑤脱落中断、⑥転出、⑦治療中、⑧不明、の8区分で計上します。

再掲

一般にすでに表示した統計の中から一部を取り出して、もう一度掲載することを再掲といいます。(例)東京都全体(含東京都特別区)の結核罹患率を示した後で、東京都特別区全体の結核罹患率を掲載する場合が再掲にあたります。

3点移動平均

統計上の操作手法です。疫学指標を時間的な動きによってとらえようとするとき、分子、分母にあたるデータが少ない指標値では、時間的な変動が大きい場合が多く、時間的な動きに特徴があってもその特徴を捉えることが難しいことがあります。3点移動平均は、前後の指標値を含めて平均値をとり、それをその時点の指標値に置き換えるので、時間的な変動をある程度押さえる効果があります。長期的な動向をみいだそうとするときに有用です。

事業所検診

感染症法に基づく事業所における定期健康診断の対象は、学校職員、医療従事者や福祉施設の職員のように、結核を発病すると他に影響が及ぶ職種に限っており、かつてのような一般の事業所については規定していない。ただ労働安全衛生法による定期健診の中で胸部X線撮影が検査項目に含まれており、現時点では従前のように事業所の検診が実施されている。

住民検診

感染症法に基づく定期健康診断のうち市町村長を実施主体とするもの。受診対象者としての一般住民とは市町村に居住する者のうち、市町村長が定める者で、多くが65歳以上としている。

小児結核

小児の結核の多くは、感染に引き続いて起こるので初感染結核の形をとる。大部分はリンパ節の腫脹を伴った結核である(肺門リンパ節結核)。初感染結核は比較的治りやすいが、菌が血中に入り、粟粒結核や結核性髄膜炎を起こしやすい性質もあるので注意が必要である。小児でも、成人の結核とまったく違わない慢性肺結核症がみられることもある。

初回治療

過去に一度も化学療法を受けたことのない患者に初めて行う化学療法である。抗結核薬は投与されずに、既往に外科療法、一般療法を受けて緩解し、再燃により今回初めて抗結核薬治療が行われる症例は含まれない。

新登録患者

1月1日から12月31日までの1年間に新規に結核患者として保健所に登録された人数です。なお、潜在性結核感染症は新登録患者には含めません。

人口動態統計

日本の厚生労働省が毎年行っている統計のことです。出生や死亡、婚姻や離婚などの件数が調査されています。

10万対率

人口10万人あたりの人数です。

診断の遅れ

結核の発症に伴う症状により、初めて医療機関(クリニックも含む)を受診した時点から結核と診断される時点までの期間を指します。最初の医療機関で結核と診断されなくても、その時点から診断の遅れはカウントされます。

接触者

結核を発症し感染させる可能性のある期間、結核発症者と同じ時間と空間を共有した人のことです。一般には結核が診断される前に接触した人のことを指します。

接触者健診

結核患者の接触者で、結核を発症しているか、発症はしていなくとも感染しているかを確認するため、医学的検査を主体とした健康診断を指します(狭義)。接触者からの発病者が実は感染源であったということもあり、接触者健診は感染源調査の役目も担っています。

全結核

肺結核と肺外結核をあわせた全ての結核です。潜在性結核感染症は含みません。

潜在性結核感染症

結核菌に感染していながら未だに臨床的に活動性の病気を起こしていない状態。「既感染」と同じ状態ではあるが、この状態にある者のうち特に発病のリスクの大きい者(感染して間もない者。その他医学的に発病リスクをもった者)には予防的な化学療法が必要とされ、その化学療法の標的として「潜在性結核感染」が特に用いられるようになった。

総合患者分類コード(患者分類コード)

結核の活動性分類を、結核登録者情報システムで用いる登録者分類コードに置き換えたものです。結核登録者情報システムに入力された登録者の情報(治療歴、病類、菌情報等)を基に自動的に分類コード化されます。「結核の統計」は、総合患者分類コードを基に集計されます。登録時の総合患者分類コードは、 1~5,8 の6種類ですが、それ以降、登録途中の総合患者分類コードは1~9 の9種類を使用します。
1. 肺結核活動性喀痰塗抹陽性初回治療
2. 肺結核活動性喀痰塗抹陽性再治療
3. 肺結核活動性その他の結核菌陽性
4. 肺結核活動性菌陰性・その他
5. 肺外結核活動性
6. 不活動性
7. 活動性不明
8. 潜在性結核感染症(治療中)
9. 潜在性結核感染症(観察中)

相対危険度

ある危険要因に暴露(環境要因もあり)された集団の発病や死亡のリスクをと暴露されなかった集団のリスクに比べたもの。一般に比で示します。危険要因の影響の強さを表します。

多剤耐性結核

少なくともINHおよびRFPの両薬剤に耐性を示す結核菌を多剤耐性結核菌と定義する。結核菌の薬剤耐性は遺伝子の突然変異により発現し、その頻度はRFPで108個に1個、INH、SMで106個に1個程度とされている。大量排菌患者を単剤で治療したり、患者が不規則内服をした場合などに、突然変異により生じた自然耐性菌が増殖し、薬剤耐性結核が生じる結果となる。初回治療例では遭遇することはまれであるが、再治療では10人に約1人の率で遭遇する可能性がある。多剤耐性結核は、治療が困難で菌陰性化が得られにくく、持続排菌することが多い。

中央値

中央値は平均値と同じ目的で使う指標値です。平均値(算術平均)は、使用するデータに極端に大きな数字があると、そのデータに影響されて大きな値になり、結果、その集団を代表する値とは言えなくなることがあります。そのような場合には、データを小さい方から並べてちょうど半分にあたる数字を代表値として採用したほうが集団の特徴をよく表します。結核管理図では、治療期間と入院期間に中央値を使っています。

治療区分

結核登録者情報システムにおいて、登録者の区分に用いている項目です。結核の発症の有無と結核の治療歴の有無によって、4つに分類します。
1. 初回治療
2. 再治療
3. 治療歴不明
4. 潜在性結核感染症の治療

「感染症発生動向調査システム:二類:結核」から、データが移行されます。必要に応じてリストから選択して下さい。
感染症発生動向調査システムの「診断(検索)した者(死体)の類型」に「無症状病原体保有者」が選択された場合、「4.潜在性結核感染症の治療」に、それ以外の類型は「1.初回治療」に移行されます。
「2.再治療」とは、結核に対する化学療法を過去に1ヶ月以上受け、かつその治療終了後2ヶ月以上経過しているものを指します。
化学療法を断続的に受けた者については、その通算期間が1ヶ月以上であるか否かで判断します。抗結核薬の服薬開始前に結核を発症し、外科的治療や安静治療を受け、現在再発した場合でも、化学療法を受けていないかぎりにおいて「1.初回治療」となります。
※治療区分で「治療歴不明」が選択されると、綜合患者分類コード判定は「初回治療」として取り扱います。

定期健康診断

結核の早期発見を目的として行われる健康診断のうち、感染症法第53条2に定める胸部X線間接撮影を中心とする定期の健康診断で、いわゆる集検に相当し、またその内容は無差別検診である。この実施の対象は政令で定められることになっており、学校病院などに従事する者、大学、高等学校などの制度(入学年度)、65歳以上の者などとなっている。その実施主体によって①市町村長・特別区の区長②学校長③事業者④施設の長に分けられそれぞれ、①(一般)住民検診②学校検診③事業所(職場)検診④施設検診などと呼んでいる。

定期外検診

接触者検診をさす。

登録中の再登録

日本では、治療終了後も一定期間登録を継続し再発を監視してきました。この監視期間中(管理健診期間中)に再発した場合、2007年からは、一旦登録を除外し、新たな発病として登録することになり、この事を登録中の再登録といいます。

登録率

年末現在、結核登録者情報システムに結核管理上登録者として登録されている人(結核の治療中と治療終了後登録の人は含みますが、潜在性結核感染症は含みません)の人口10万対率です。人口は当該年の10月1日現在総人口を用います。

届出率

診断された結核患者が、各国の制度に基づいて国や地方政府に届け出された数を人口10万人あたりの率で表したもの。開発途上国など各国の結核対策の状況によっては結核患者の届け出制度が未整備である場合があり、実際に発生した結核患者数と国や地方政府に届出された結核患者数との聞に差が生じる場合がある。

年間感染危険率

結核に感染を受けていないものが1年間に新たに感染を受ける割合。(自然)陽転率、ときに感染率と呼ばれるものにほぼ等しい。結核感染の頻度を表す指標であるが、広く結核のまん延状態を、特に国際比較の上などで最も正しく表す有用な指標として用いられている。BCG接種の行われていない集団でのツベルクリン反応検査により既感染率を求め、これから数学的に算出する。まん延状況の判断のためには、ある時点でのこの値とともに、その時間的な推移をみることが重要である。日本では1968年におこなわれた沖縄結核実態調査成績に基づくモデル計算から推定されている。これによると1950年頃には4%だったが、その後年率11%で低下、1980年頃には0.1%程度になったとされる。ただしその後は罹患率の低下が減速したこともあり、それまでのような率で低下しているかは定かでない。世界で最も低いのはオランダであり、1985年ころに0.01%台に下がっている。発展途上国では1~4%のところが多い。

年報(結核登録者調査年報)

結核登録者情報システムの情報を元に、1月1日~12月31日を当該年として、結核登録者の情報をまとめたものです。

年末時

「結核の統計」では結核年報情報から集計表の形で統計を掲載していますが、その集計対象には大きく2種類あります。当該年(1月1日~12月31日)に新規に登録された方と当該年の年末(12月31日)に登録されている人です。年末時とは後者を対象にした統計に使われる用語です。

肺外結核

1996年の国際疾病分類により、肺外結核は「肺あるいは気管支以外の臓器を主要罹患臓器とする結核症および粟粒結核」と規定されているが、その中には、従来日本で便宜的に肺結核に含めてきた結核性胸膜炎(結核性膿胸を含む)、胸腔内リンパ節結核、孤立性気管または気管支結核、結核性喉頭炎なども含まれる。また、肺結核と肺外結核が合併したときには肺結核とするが、粟粒結核は肺病変の有無を問わず肺外結核とする。

肺結核

肺結核はすべての結核症の約80%を占める。1996年改正の活動性分類により、肺結核は肺または気管支を主要罹患臓器とする結核症である。

培養検査

臨床材料を培地に接種し、適当な環境下においてその中にある微生物を増殖させ、これを検出する検査法である。結核菌(抗酸菌)検査では無菌的に採取できる材料(髄液や胸腹水など)を除き、一般にアルカリ等で混在する他の微生物を殺菌処理した後に、抗酸菌用培地に接種し、37℃前後に保って発育した集落を観察する。塗抹染色法に比べれば検出率が高く生菌を得ることによって同定検査や薬剤感受性試験が可能となり重要な検査法であるが、抗酸菌の発育が遅いので、結果を得るのに長期間を要する(結核菌では4週間以上)。
菌発育状況の表示記号

- 菌集落の発育を認めない
+ 集落数1~200(実数を付記 +20など)
++ 集落数200~500(概数を付記) 大多数の集落は分離、一部融合あり
+++ 集落数500~2,000 集落数が多くほとんど融合
++++ 集落数2,000~ 集落が培地全面を覆っている

ハイリスクグループ

結核発病のおそれが高い者をいい、リスクがある程度以上なら化学予防の対象となり、それ以下でも健康診断の重点対象となる。小児、若年者では、BCGなしでツベルクリン反応強陽性の者、BCG既接種でも塗抹陽性患者との接触があり、かつツベルクリン反応が強陽性の者などがハイリスクグループに含まれる。成人ではX線有所見で化学療法歴のない者、糖尿病やじん肺症をもつ者、腎透析、免疫抑制剤使用、アルコール中毒、胃切除、副腎皮質ホルモン剤長期使用者、あるいは抗癌剤を使用している者などがハイリスクグループとされている。医療従事者は感染の機会が高くハイリスクグループといえる。

発見の遅れ

結核の発症に伴う症状が出現してから結核と診断されるまでの期間を指します。喘息などの呼吸器疾患をもち、結核に伴う症状出現時点を特定することが困難な場合には、診断日より3か月前を症状出現時期として対応する場合もあります。

BCG

カルメット(Calmette)とゲラン(Guerin)によって作られた弱毒化ウシ型抗酸菌で、結核予防ワクチンとして広く世界的に用いられている。1909年乳牛より分離された強毒ウシ型菌を、5%グリセリン加胆汁馬鈴薯培地上で約3週間ごとに継代を続け、13年間230代の継代後、実験動物に接種しても発病させないことが確認され、1921年に人体試験も開始された。1924年に毒力固定宣言がなされた。その後世界各国に分与され、それぞれ継代維持された結果、現在ではなかり性質の異なった亜種が多く存在している。わが国へは1925年志賀により持ち帰られ、現法どおりに維持継代されてきた。1965年172代目の菌が標準株(Tokyo172)と定められ、ワクチン製造用に用いられている。他の亜種に比して副作用が少なく、凍結乾燥後の生存率、耐熱性が優れている。

標準療法(標準的治療法)

結核の治療に最も強力な結核薬の組み合わせで治療すること。日本結核・非結核性抗酸菌症学会は初回治療例の標準的治療法として、RFP、INH、PZAにSMあるいはEBの4剤併用で2ヶ月間治療後、RFP、INH(+EB)で4ヶ月間治療することとしている。PZAが投与不可の場合、RFP、INHにSMあるいはEBの3剤で6ヶ月間治療後、RFP、INH(+EB)で3ヶ月間治療することとしている。耐性化防止の観点から、活動性結核の治療はすべて3剤以上の併用療法を原則とする。

病状不明

結核患者の登録整理と指導を目的とし、病状については1年以上新しい情報が得られない場合は活動性分類において病状不明として整理することをいう。しかし短期化学療法の今日では6ヶ月ごとに情報を入手し適切な対応をすべきであろうとされ、病状不明をできるだけ少なくすることがサーベイランスにおいて望まれる。

不活動性結核

治療を終了した者は不活動性に分類を変更する。活動性結核であったが公費負担承認期間を2ヶ月以上経過しても継続の申請が行われていない者であって、最近の菌所見が2回とも陰性である場合には「不活動性」としてもよい。もし、菌所見の陰性が確認されていない場合には、現在の活動性分類は最終の情報が得られてから1年以内は「活動性」にとどめられ、その後「病状不明」となる。

別掲

一般にその統計が重複することがない場合の説明として用います。(例)北海道の中には、札幌市(政令指定都市)があります。結核対策行政では、政令指定都市は独立しているため、結核の統計も政令指定都市を除く北海道、札幌市の2つに分けて示すことが求められます。

 

有症状受診

咳、痰などの自覚症状を訴え、自ら医療機関に受診することをいう。わが国の結核患者の80%は症状を訴え受診して発見されているので、有症状受診は極めて大切である。

有病率

ある時点において、ある人口集団中にいるその病気をもっている人の割合。通常人口10万対率で表す。実態踏査によって真の有病率が得られるが、結核サーベイランス上でも、年末現在において治療を要する患者数(ただし予防投薬対象者を除く)をその年の人口(10月1日現在の総人口)で除して有病率としている。実態調査による有病率は結核のまん延を表す重要な指標であるが、わが国では1973年以降得られていない。サーベイランス上の有病率は疫学指標ではなく、対策上必要な資源を計算する上で重要である。

予防内服

結核発病予防を目的としてINHなどの抗結核薬を投与すること。化学予防、あるいは潜在性結核感染症治療とも呼ばれる。感染症下においては「無症状保菌者に対する治療」として、患者は届出の対象であり、また医療費公費負担の対象となる。従来この治療は結核感染を受けて間もないと考えられる若年者(ツベルクリン反応陽転者)に対して行われてきた。しかし2007年からは年齢枠を取り除き、すべての年齢の発病リスクの高い者が対象とされるようになった。
具体的には①結核患者接触者で最近の感染が特に疑われる者、②胸部X線などで治癒痕があり感染が特に疑われる者、③免疫抑制状態にあり(HIV感染、透析、免疫抑制剤治療など)結核感染を受けた可能性がある者。などである。
なおツベルクリン反応によって適応を決める場合には日本結核・非結核性抗酸菌症学会の勧告では以下のような基準が示されている(小児とくに乳幼児においてはこれよりも小さい値を基準として用いることが有用である)。

  接触歴なし 接触歴あり
BCG歴なし 発赤30mm または
硬結15mm以上
発赤10mm または
硬結5mm以上
BCG歴あり 発赤40mm  または
硬結20mm
発赤30mm  または
硬結15mm以上
  ※原則として喀痰塗抹陽性患者との接触とする。ただしそれ以外でも感染性と考えられる患者との接触を含む

罹患率

一年間に発病した患者数を人口10万対率で表したもの。実際には発病した者をすべてひろうことは不可能なので、登録された患者の数を人口で割るため、結核の統計では新登録率とも呼ばれ、当該年内に登録された患者(潜在性結核感染症を除く、また当該年内に登録除外になった者を含む)数を10月1日現在の総人口で除したもの。患者の発病時の病状に応じて全結核罹患率、肺結核罹患率、感染性罹患率、塗抹陽性罹患率などに細分することもある。結核のまん延状況の最も基本的な指標であるが、発生した患者数と登録された患者数の差があることが問題である。つまり発生した患者患者のうちどれだけ発見されているか、発見された患者のうちどれだけ登録されているかにより左右される。日本では現行と同じ基準の率は1961年から得られるが、その後の最高値は同年の445.9である。

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